昔、ハンガリー軍がアルプス山脈で軍事訓練をしていたそうです。天候も良く、訓練としては最適な日であったため、翌日の別の演習に備えて兵士3人を軽装のまま山へ送り出しました。しかし、不運にも天候が急転し、雪が降り始めたのです。雪は吹雪に変わり、吹雪は二日間続き、3人は遭難してしまったのです。
諦めかけていた三日目、なんと3人は奇跡的に自力で戻ってきたのです。どうやって戻ってこれたのか聞くと、隊長はこう答えました。
「全員が諦めかけて立ち往生していたのですが、兵士の一人が偶然ポケットに地図を持っていたのです。そのことによって我々は冷静になり、テントを張って吹雪を耐えてから、方位と地図を頼りに視界の悪くなった山道を進んでいったのです。隊員達は、地図を持って歩く私の後を信じてついてきてくれました。」
そうだったのか、と彼らを救ったという地図を見ると、驚いたことに、それはアルプス山脈の地図ではなく、ピレネー山脈の地図だったのです。・・・
これは実話らしいのですが、受験生時代にこのような話
(聞いた話なので全然正確ではありませんが、話の脈絡は変えていません。)をTAC経営学の藤沢先生がしていたのを覚えています。
さて、この話から読み取れる教訓は何でしょうか?
色々な答えがあるでしょうが、一つ言えるのは、「人間は目標となる地図がしっかり決まっていれば(たとえ間違った地図であっても)それを心から信じて突き進めば、なんとかなってしまう」ということではないでしょうか。当然地図は正確であるに越したことはないのですが、ここでは「地図が正確か否か」よりも、「地図、そして地図を持った隊長を信じて全員がついていくこと」が彼らの命を救ったのです。死ぬかもしれない極限の状態で、自分たちは地図を持っているのだから絶対に帰ることが出来るんだという自己暗示的な自信があったのかもしれません。
これを企業経営に当てはめたらどうでしょうか。トップの戦略が100%正しいかどうかよりも、トップを信じて社員たちがしっかりとついてきてくれることの方が、時として重要であるということです。もちろん見当はずれな戦略は論外ですが、社長が強いリーダーシップを発揮して社員に信頼され、組織として一貫した方向性を持っていれば、良い会社になるといったところでしょうか。経営学の教授は、組織の戦略論でこの話をたまにするそうです。
さて、昨日、茨城県の高校総合体育大会(インターハイ県予選にあたる)の開会式があり、茨城の高校出身である僕に講演の依頼が来たため、行ってきました。インターハイを目指す高校生と教員を合わせて約1000名という大規模の講演会でした。その話の中で、選手と指導者の皆さんに問いかけをしてみました。
「どうすれば、チームとして、強くなれると思いますか?」
この問いに対しての答えはたくさんあると思うのですが、自分自身の今までの経験の中で確信を持って言えるポイントが一つあります。僕は、さきほどのハンガリー軍の地図の話をしました。そして、強いチームの条件として「チーム全員が同じ地図を掲げて、まっすぐ同じ方向を向いていること」というポイントを挙げました。
実はこの話、約4年前にブログで書いたのです→
「母校、土浦日大に行ってきました」(もう4年も経っていたことにびっくり・・・。)ここで言う地図は、指導者・コーチにあたります。そして、その地図を信じてついていくのは選手です。指導者が100人いれば、100通りの地図があります。バスケにも色々なスタイルの戦術があります。どれが正しい地図だとか、間違った地図であると言っているわけではありません。もちろん、地図は正しい方がいいに決まっていますが、それよりも大事なことは、選手たち全員がどれだけ指導者を信頼してついていっているのかだと思うのです。
さらに、高校生向けにですが、講演会で言い忘れたことがあったので書いておきます。指導者が地図にあたると言ったのですが、選手の中にも地図になるべき人がいます。それはキャプテン、もしくは上級生です。後輩たちにとってみれば、先輩たちは地図になります。こちらの先輩はこう言っている、でもあちらの先輩はああ言っている、そんな状況では後輩たちは何を信じていいのか分からなくなります。地図が一つのチームの中にいくつもある状態は、良いチームとは言えません。強いチームは、一枚の地図を掲げているチームだと思うのです。
今シーズンのアルバルクは地図そのものも素晴らしかったと思います。ただ、全員がチームの役割・ルールを徹底して守り、一枚の地図に書かれたゴールを信じて向かっていったことが、最高の結果をもたらした一番の理由ではないのかと思うのです。