日本のバスケファンも驚いた、韓国女子バスケ界の惨状

日本のバスケファンも気付いた韓国の異変

ロンドンオリンピック世界最終予選、日本対韓国は一時34点もの点差がつく韓日戦としては歴史上まれにみる韓国の惨敗だった。

これまで韓国と日本はFIBA主催試合の通算対戦成績は7勝32敗。日本が大きく負け越し。
日本では「仙台の奇跡」と語り継がれる2003年FIBA ASIA選手権 準決勝で81-72で日本が勝利したものの、その後は7連敗している相手。
(2006年ドーハアジア大会では日本が韓国に勝利しているが、アジア大会はFIBA主催ではなく重要度は低い)

日本からすれば、これまで韓国には何度も苦杯を舐めさせられ、前に立ち塞がれた大きな壁。
「シューター軍団」の異名を取るシュート力も影を潜め、韓国最大の武器であるメンタル面においても全く覇気が感じられなかった。
フラストレーションが溜まりラフプレーに出る始末。あの憎たらしいほど強い韓国の姿はどこにもなかった。

試合放送中も日本のネット上では、
「韓国がおかしい」・「韓国が変」・「こんな韓国見たことない」
などの意見が飛び交い、中には「何か悪いもの食って当たってるんじゃないか?」というものまで。
日本のバスケットボールファンも韓国の異変を感じていた。

韓国の報道でも「国辱」「惨敗」の見出しが並んだ。「アンカラの惨事」という言葉も定着した。

現在の韓国女子バスケットボール界は存亡の危機にあるといっても過言ではない。

世代交代の失敗やユース世代の低調

韓国は中・高校生年代に新しい人材が全くといっていいほど育っていない。
韓国内でも中高生世代の競技力と競技人口の低下が指摘されてきた。
現に世代別カテゴリでは、中国と日本の後塵を拝し、台湾よりも下に位置することもある。

開催地 優勝 準優勝 3位 4位
20 2010アジアU-18女子大会 タイ 中国 日本 台湾 韓国
19 2008アジアU-18女子大会 インドネシア 日本 中国 韓国 台湾
18 2007アジアU-18女子大会 タイ 中国 日本 韓国 台湾

中高生年代が育っていないため、WKBLに若い有望な選手は出てこず。

2011FIBA女子アジア選手権銀メダルを授与される韓国チーム画像

銀メダルを授与される韓国チーム


2011年長崎県大村で行われたアジア選手権ではチームの若返りをしつつも準優勝という結果を残したが。

この大会で準優勝となりロンドン五輪出場権を得ることは出来ず今回の世界最終予選に回ったが、優勝した中国をあと一歩まで追い詰め、対日本戦ではホームコートアドバンテージで有利な判定を得る日本にリードされたものの逆転勝利し日本に力の差を見せつけた。

世代交代にも成功しアジア2位の地位を確固たるものとし、人々は国家代表を称賛した。
それから1年も経たずに今回の「アンカラの惨事」である。
過去記事:FIBAアジア選手権長崎大村大会決勝中国対韓国

WKBL新世界電撃解散

2012年4月13日にWKBL新世界が解散を発表。突如1枚の文書だけで発表されたチームの解散。
韓国女子バスケットボール界に激震が走った。現在新たなチーム引受先を探してはいるが、先行きは不透明だ。
WKBLも以前ほどの人気がある訳ではなく、チーム運営にそれほど熱心ではない企業が追随するのではないかとの懸念も広がる。

世界最終予選でも新世界COOLCAT解散で所属先が未定の代表選手もいた。
キム·ジユンとキム·ジョンウン
キム·ジユンは代表キャプテンにも任命され、五輪出場を決めチーム存続の機運を高め、新たな引受先へのアピールをしようとしたが、それが逆に重荷や負担になったのかもしれない。

行政空白状態の協会と内紛

WKBLが事実上の行政空白状態が続いた。
WKBLを導いてきた3人のうち、キム·ドンウク専務理事が辞任。イミョンホ事務局長も定年退職。現役プロスポーツの最長寿の首長だったギムウォンギル総裁さえ総裁職を辞任した。これといった重量感のある人もいないWKBLなので、どう対応するか筋道を決めかねているのは当然である。

次期バスケットボール協会長職を狙う副会長らの派閥争いも聞こえてきた。

不可解な監督選任

韓国ではシーズンチャンピオンチームの監督が代表監督に就任する慣習があり、通常であれば新韓銀行のイム・ダルシム監督が代表監督に就任するのが自然な流れだ。
異例的にイム監督が代表監督に選任されることはなかった。WKBL新韓銀行で6連覇を果たし、アジア選手権で五輪出場権を得ることはできなかったものの、結果と実績を持っている監督であり疑問の声も挙がる。
協会は”五輪出場権を得るためには変化が必要”との説明をしたがイマイチ説得力に欠けた。

あくまで韓国内で囁かれる噂ではあるが、ある協会内の人物が以前にイム・ダルシム監督にコーチ就任を断られたため、この人物がイム監督の代表監督就任に反対したという話がある。

またイ・ホグン監督は三星生命の監督であるが、自チームから選手を供出しなかったことにも疑問の声が挙がった。
代表監督を追われた形のイム・ダルシム監督は新韓銀行の監督であり、キム・ダンビ(新韓銀行)の代表辞退は報復行為ではないかとの憶測も流れる。
もちろん噂であり真相は定かではない。しかし、こんな噂がまことしやかに囁かれるくらい異常事態だったということだ。

慢心と油断

代表チーム首脳陣の交代や連盟トップの辞任、監督選任や選手選任でもゴタゴタ続きだった。韓国代表の危機は韓国内でも指摘されてきた。
ただ、これまで連続してオリンピック出場を果たしてきて、今度も行けるんじゃないかと思っていたところがある。
ましてや韓日戦となれば闘志を燃やすと考えていた。

チーム内での選手間の不協和音も聞こえていたが、格下と見ていた日本に惨敗するとはファンやマスコミは思ってもみなかった。
悪い面が短期間に顕著に出てきた形だ。

韓国でも名将の呼び声高い指導者で、日本のJALラビッツのコーチだったイム・ヨンボ氏(現在日本在住)も韓国マスコミのインタビューに対し、韓国の女子バスケットボール界の現状を指摘し、最終予選で日本と韓国が対戦した場合に韓国が負ける可能性に言及していた。
イム・ヨンボ氏は現在日本に在住し新潟県で巡回コーチを務める、外から韓国を見て韓国の問題を肌で感じていた。

これまで、ロス五輪での銀メダルなど数々の伝説を作り伝統ある韓国女子バスケットボールである。
このまま後退していく韓国ではない。きっと立て直してくるだろう。